子供には秘密の場所がある。
子供部屋の机の引き出しの奥にも秘密は詰まっている。
小石、貝殻、木の実、ガラス、玩具や文房具の破片……そんなガラクタが時として彼らの宝物となる。
親にみつかれば叱られるか捨てられるに違いないと何がなし気がかりな反面、誰にも知られぬ秘密を持つこと自体、身震いするほどの快感を伴う。
かくして宝物は人知れず増殖の一途を辿ることと相成る。
色や形が気に入った物もあれば、海水浴やキャンプの想い出が詰まった物、後で何かに使おうと思いながらも自分でも忘れてしまっている物さえある。
だが、どれをとってもかけがえのない代物に他ならない。
単なる事物を超越した付加価値のある物なのだ。子供は好奇心の塊だ。
ゴミの山でもあろうものなら、きっと一日中でも遊んでいられよう。家の外は、宝の山だ。
金鉱、銀鉱はあちらこちらに転がっている。通学路はもとより、友人宅、おつかいに行く道すがらにも新たな発見はある。
お気に入りの場所でもみつかろうものなら、そこは秘密のアジトに豹変する。田舎ではそんな場所に事欠かない。
畑の物置小屋、空地の廃車、大木の根元、蔦が下ってターザンごっこに最適の藪、湧き水が流れ粘土質の土がある所、見晴らしの効く高台、登るのに手ごろな潅木……
大人なら別段気にも留めず見過ごしてしまうような場所が、子供にとっては強烈な磁場の発信地となるのだ。